欧州建築行脚56-57 アドリア海

8月7日日曜日。

イタリアからギリシャまでアドリア海を渡る大旅行の日。1日目午前にナポリからイタリア東部のアンコーナまで電車で行き、13時半アンコーナ発翌日の12時ギリシャのパトラ着のフェリーに。パトラからは電車でアテネまで直行。2日間の大移動。

5時起床。今日でイタリアはおさらば。旅行も残り2カ国になってしまった。スタッフに別れを告げ、5時半に宿を経つ。

5時半のナポリはまだ暗い。昼間にはテラス席になるテントが、全て閉じられている通りを歩いて駅へ向かう。ナポリからアンコーナまで再びローマを経由しながら約6時間。

アンコーナ駅からは徒歩でフェリー乗り場まで向かった。出発は13:30。「国内線は1時間前まで、国際線は出発2時間前までにチェックインを終えてください。」とチケットに書いてあるのを見落としていた。現時刻12:00。「イタリア-ギリシャは国際線?シェンゲン内やから国内線扱いでいいんよな??」と内心焦りながら、着いたと思ったらチェックインの場所は別の場所だという。無愛想な運転手のシャトルバスに乗ってチェックイン場所へ。着くと行列が、待つこと1時間。「間に合ってくれ!」と心の中で叫びながらチェックインを終え、フェリーになんとか乗り込んだ。

14時半に船は出発。「全然焦る必要なかったやん」って思いながら海を眺める。景色が本当に綺麗だ。

大海原。みんな海を向いて思い思いに話したり寝転んだり。子供たちは走り回り、大人はビールと煙草を片手にバカンス気分を楽しんでいる。旅は長いから、映画で時間を潰す人もいれば、読書する若者もいる。

フランツ・カフカの「変身」を読む。なぜこの本かというと、以前たまたまダウンロードしてたからというだけだけど、船旅で風に吹かれながらの読書は結構いい。すぐに読み終わって、次の本が恋しくなってしまった。

あと2週間で旅が終わるのかと思うとなんだか寂しい。途中疲れて日本に帰りたいと思ったこともあったけど、帰ってゆっくりしたいという気持ちと、この刺激に満ち溢れた日々をもっと続けていたいという気持ちがせめぎ合っている。

夜は漆黒の海へと姿を変える。空と海とを隔てていた水平線が消え、小さな宇宙のなかをただひたすら進む自分たちの船といった具合に。月がポツンと光るのをテラスでひとり眺めていたら自分と同い年くらいの女の子と、そのボーイフレンドが隣に座った。煙草の火が風でなかなかつかなさそうだったからそっと手を差し出すと、ありがとうとニッコリ。そして一本いる?って聞いてきた。せっかくだからと一本もらう。
イタリアから旅行で来た彼ら。「結婚してるの?」って聞いたら、照れくさそうに「いやいやまだ若いから」と。彼の方が「数年後にね」と言ったとき、彼女が彼の頭を叩きながら嬉しそうに「なに言ってんのよ」って照れ隠し。多くは話さなかったけど、いいカップルだった。

8月8日月曜日

朝、船のアナウンスで目を覚ます。硬いベンチと枕代わりのリュックから体を起こすと美しいオレンジが目に飛び込んできた。日の出だ!!目を擦りながら慌ててデッキに駆け寄りカメラのシャッターを切る。霞がかったオレンジの空と広大な海、そしてバックに広がる緩やかな山々が本当に美しかった。

フェリーから降りる時間が段々と近づいてくる。海はみたことないくらい青い色をしていて、水平線がどこまでも続いてる。22時間というほぼ丸一日船の上で過ごす長旅だけど、不思議とまったく退屈しなかった。

パトラに到着して駅まで歩く。アテネ行きの電車に乗るため。するとこれまたみたことないくらい美しいビーチが広がっていた。青い海にバックには白い山並み。スイスの海に似ているようで、どこか南国の雰囲気も持ち合わせている。泳ごうか迷ったけど、電車の時間上断念。よく考えるとこの度でまだビーチで一度も泳いでいない。もったいないな。

アテネに着いた。宿のチェックインを済ませ、ルームメイトに教えてもらった店でpita gyro ギュロピタを買って宿のテラスでほうばる。なんと部屋のテラスからアクロポリスが望めるという最高のロケーション。ギュロピタは安い上にボリュームもあって、肉、野菜が口の中でゴツゴツ暴れわまる最高のローカルフード。ここにビールがあればと嘆くがここは我慢。

明日からはついに世界の起源、古代ギリシャを見て回る。どんな景色が待っているんだろうか。

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