欧州建築行脚47 ローマ サンピエトロ大聖堂/広場/システィーナ礼拝堂
7月29日金曜日。
今日はミケランジェロ三昧。キリスト教の総本山、世界一小さな国ヴァチカン市国へ突入。
サンピエトロ広場
広場のいいところ。人が集まるパブリックな空間。悪いところ、暑い。楕円形で中心が少しくぼんでいる。広場に何を求めたんだろう。
ベルニーニの設計。ベルニーニはコロッセオの空間形式を参照し、広場に劇場性を持たせようとしたらしい。さらに母なる手によって守られているような閉じた空間と、世界中から救いを求めてやってくる人々にとって開かれた場所という2つの相反するものを同時に実現しようとしたという。
いいなぁって思うと同時にもう少し日影が欲しいとも思う。
サンピエトロ大聖堂
ルネサンスの傑作建築。世界最大級の教会。カトリックの総本山にふさわしいと思わされるような絢爛さと落ち着きを持っているように感じる。そしてミケランジェロが天才と言われる所以がすこしわかる。明らかに偉業。数々の近現代建築家の作品を見てきたけど、ここまで圧倒される建築はない。安藤忠雄がミケランジェロを最も偉大な建築家と称する理由もなんとなく感じられた。本当に語る言葉が見つからないけど、彼ほど人生を苦悩の中もがき続け、芸術に捧げた人物はいないんじゃないか。
クーポラにも登る。凄まじい量のモザイク画がクーポラ内部を埋め尽くす。
再び中へ。クーポラからの光が床へ落ちている。パンテオンのような光の線が現れている。光は時間が経つにつれ、向き角度を変えていき大聖堂を激しく照らす。たしかに、神の如く建築なのかもしれない。
ピエタ
美しすぎて度肝を抜かれる。ピエタはヤバいって本で読んでたけど、ほんまにヤバい。建築以外の美術はよくわからないし、同じミケランジェロ作のタビデ像も良かったけど、そんなに期待してなかった。こんなに彫刻で衝撃を受けるなんて想定してなかった。
とにかく永遠に見ていられる。デッサンしても納得いかないし見続けてもなにもわからない。けどとにかく美しい。
これを25歳で作ってるんだからもう何が何だか。恐ろしすぎる。
システィーナ礼拝堂
残念ながら撮影禁止で写真がない。
またまたえげつない作品。人間技じゃない。こんなん1人でやってしまうとか。圧倒的技量と圧倒的絵画量。次元が違いすぎる。
彫刻でも感じた驚異的な肉体のリアルさが絵画にも表れている。立体感もそのまま、絵画だけど動的で3次元的に見える。天井画に関しては彫刻との区別がつかないくらいの躍動感。
天井画、4年の歳月をかけて段々と上手くなっていくというのは本当だった。躍動感が増している気がする。
ミケランジェロから
自分には何ができるか、なんて考えながら旅をして、天才の仕事ぶりを見ると「何にもできねぇだろって」開き直りたくなる。死ぬ気で仕事をする人間。ミケランジェロに及ぶ人は他にいるんだろうか。
なんでもやってのけるレオナルド・ダ・ヴィンチももちろんカッコいいと思ってたけど、ミケランジェロの命のかけ方は尋常じゃない。そして作品ひとつひとつに命が宿っている気がする。苦悩のなか生み出し続ける精神力は到底真似しようと思ってもできないし、だからこそ英雄のようなカッコよさがある。
どうせ仕事するなら、何年もこうやって人の心に訴えかけられたり、語り継がれたりするものを作りたい。古びない美しさを生み出してみたい。そんな風に理想を追い求める自分もいる。
こんな偉人の作品を前にして、自分はこれからどんな生き方をするのか。ミケランジェロという天才に恐れ慄いた1日。